船岡 佳生 代表

Yoshiki Funaoka

対話と学びや旅が好きな25歳。普段は私立高校の教員として、教材開発に携わる。
小学生の頃、飛行機に憧れ、大学では工学部で機械工学を専攻。Californiaへの留学経験と鳥人間コンテストに携わるにつれ、ものづくりの魅力と「工学」だけでは「良い」ものづくりができないことに気付く。鳥人間は滑空機部門で準優勝できた(19年)が優勝できなかったことが悔しくてたまらない。それでも飛行機を作る夢は叶ったので満足。それからはリベラルアーツが大事だと気付き、福岡の大学生向けのプログラム(LAP)に参加。そこで、様々な出会いと影響を受け、大学院ではものづくりを工学以外の視座から学びたいと、倫理教育の研究を行い、情意的領域の大切さを知る。以来、人の想いに向かい合う機会を「つくる」ことに。一応(?)工学修士。だから、今後も目に見えるものだけではなく、たくさんの笑顔と「佳く生きる」をつくっていく。

PoetryFactoryのこれまでとわたし

<PoetryFactoryとの出会い>
 東京工業大学、大学院2年の前期、起業のための授業でPoetryFactoryと出会いました。その授業では、私は別の教育系の起業プランを自身で練っていましたが、残念ながら収益性がないと見做され、選考から漏れてしまいました。そこで出会ったのがPoetryFactoryの詩のラッピング事業です。説明を最初に聞いたときに、言葉を人に贈ることは気恥ずかしいと思うタイプですが、スタイリッシュにデザインできたらとても素敵だと感じました。また、個人的に贈り物はしたいタイプですが、何を送ろうか困ることもしばしば。高価なものを準備できないと贈り物そのものが恥ずかしくなり、やめてしまうこともありあました。このサービスであれば、中身は普通のものでも特別な、プレゼントになるのではないかと思いました。『贈与論』(マルセル・モース)という本を少しだけ、かじった時に印象的だったのが贈り物を互いにすることによって人間関係が成り立っていることです。きっとこのサービスで良い人間関係を増やせるのではとやる気になったのを覚えています。

                       当時のロゴとサービス案内

<優勝はしたものの・・・>
 当時の代表はビジネス経験が豊富で、大変勉強になりました。授業自体は起業・投資のプロの講師からリーンスタートアップというフレームワークを実践と共に学びました。抽象度が高い絵空事のアイディアではなく徹底的に人にインタビューをして、本当のニーズは何かを見出しました。授業の最後にプレゼンを行い、なんと優勝することができました。とても起業のプロセスとしては学びになりました。しかし、これはあくまで授業のためのアイディア。実際にこのビジネスを実現させるとなると、話は変わってきます。基本的に大学院生・博士課程が集まったチーム。お金も時間もありません。僕も修士論文が佳境になり、このプロジェクトにやる気はあってもどうしていいかわからずという状態でした。さらに、いくつかの助成金も出しましたが、通らなかったことも追い討ちをかけ、辞めていったメンバーもいます。

                    ご指導いただいた先生、ご協力いただいた方、誠にありがとうございます。

<平井さんとの出会い>
 そんな状況の中、ビジネスモデル構築中にヒアリングをさせていただいた平井達也さんに優勝の報告と現状をお伝えする機会をいただきました。平井さんは以前、唯一対面でお話をお伺いできた方で、詩集をプレゼントしていただいておりました。また、私たちのサービスを一度購入してくださったこともあります。改めてじっくりお話をお伺いすると、様々な詩を取り巻く環境の課題を知ることができました。そもそも詩人になるには、詩に関する協会に所属する必要があり、そのためには詩集を出版する必要があるそうです。しかし、そのためには、自費で出版費用を賄う必要があるが、昨今詩集を購入する人が減っているためなかなか売れず、ほとんど費用を回収できないそうです。そうすると若い才能溢れる人が作品を発表する機会に困ることがしばしばあるとのこと。他にも様々な要因により、文化の継承的な課題(危機と言っても過言ではないかもしれません)に直面する。こう言った内容を平井さんから熱意を持ってお伺いし、とても驚きました。そして私は好奇心旺盛の方でもあり、プロの専門家に話を聞くことを中心とした学生団体を運営した経験がありました。そこで、平井さんを講師としてお話をお伺いしたり詩を気軽に読んで楽しむことのできる講座を始めました。


<模索の日々>
 ポエカフェが継続的にできるような体制にはなりましたが、なかなか参加者も増えないし(お客様1人という会も)、ビジネスという観点からは十分な収益とは言い難く、様々な仮説検証を行いました。仮説検証の一つに紙のグッズ製作があります。平井さんの詩を拝読したときに、時々親しみやすくお茶目な詩があるなという印象を抱きました。数字同士の公約数の関係の表現や√の中に押し込められるというような表現が目を引きました。理系が背景の私からすると数字は数字ですし、擬人的なイメージは全く浮かんできません(トホホ)。その中でも、一際私が気になった詩は「クリアホルダー」という作品でした。そこで平井さんと打ち合わせを重ね、「クリアホルダー」の「クリアファイル」を作成することができました。私もとても気に入って普段使いしております。

                      様々な挑戦と小さい規模での検証を行ってきました

<活動の広がりと決意>
 そうして地道な活動を続けるうちに、段々と活動にご興味を持ってくださる方が増えました。ポエカフェは詩の鑑賞そのものですが、しっかりと語り合うことができることを重視したイベントに変化させたときに、格段に参加者数と満足度が向上しました。そして今ではよりじっくりと詩を味わいたい人向けの講座、「戦後スタンダード詩を読む」を開催できています。この講座の教科書は『日本名詩選3』という本を用いておりますが、なんとこの本の著者、西原大輔先生に講師を務めていただいております。この本を手に取った時に理解のしやすさと研究的背景に裏打ちされた理論が相乗効果によってスーッと詩が染み込む気持ちになりました。この先生しかいないと思い、すぐに連絡させていただきお会いし、先生の詩に対する情熱に感銘を受けました。そしてこの頃から、私は大学院を無事修了し、進路としては高校教員の傍らこのような学びに関する事業をリベラルアーツの事業とうまく折り合いをつけ本格的にスタートすることを決意しました。それからラジオ事業を始めたり、法人化の準備、「Poemsight」の創刊準備号など忙しく充実した日々を送らせていただいております。関わってくださっている皆様、講座を楽しみにしてくださる皆さんに感謝し、持続的で安定的な事業を行えるように精進してまいります。どうぞPoetryFacotoryをよろしくお願い致します。

生活の中に詩的な時空間を

 私たちは意外と物語の中で生きているのではないかと考え始めたのは、詩のようなものと触れてからでした。誰もがみな詩人的な側面があるのではとも思います。実は僕は高校生の時のあだ名の1つは「ポエマー」でした。国語は嫌いではありませんでしたし、文章に対して深く味わおうとする姿勢は持っていたと思います。高3の時、夏目漱石の「こころ」を数ページずつ担当し解釈したものを、クラス全体に発表するという授業がありましたが、喋り続けて止まらなくなって授業時間全部使ったことがあります(先生は許可してくれました)。何と言っても当時部活で他の部員のモチベーションを高める時に、言葉を工夫したり、自分自身で処理しきれなくなった思いをツイッターに載せて表現していた時期もありました。それが詩なのかと問われるとなんとも言えませんが、それでも今振り返ると大切な私の構成要素の一つであり、言葉や人の感情・想いを大切にしようとするきっかけだったのだと思います。

 そんな私の背景とこれまでの活動を踏まえて、PoetryFactoryのビジョンとして、多くの仲間と相談し、このように表現してみました。

自分と他者の想いについて考え・大切にし合える社会に貢献するため、詩のあらゆる可能性を信じ、詩と関わる人を一人でも多く増やす

 僕が対話を大切にしてきたのは、人の想いに寄り添うためでした。でも、想いがあればなんでもOKというわけでもない。よくない感情を持ってしまったらそのままにせず、向き合わないといけない。知識の力も借りることもよくあることだと思います。互いの想いがぶつかったときや、自分の想いがわからなくなった時には、きちんと自分とも向き合わなければならない。私が詩を書くときは自分としっかり向き合うことがしやすくなるので、詩だからこそできることだと思います。そして、社会にはそんな時空間がたくさんあるはずです。でもまだその場を知らなかったり、失ってしまった人もいるはず。じっくり人の話は聞けないけど、詩なら読めるという方もきっと多いでしょう。だから、自分と他者の想いについて考え・大切にし合える社会に貢献したい。

 そして、詩には無限の可能性があると思います。特に日本は5・7・5の17文字だけで世界を表すことができる俳句や、7・7をつけた和歌などさまざまな詩の伝統があります。以前、たくさん詩が書かれ、本もたくさん売れた時代もありました。現在は、情報化社会により容易にインターネットで詩を発表したり、楽しむこともできます。素敵な詩の文化を残すだけでなく、さらに発展させ未来につなげたい。PoetryFactory創設のきっかけとなった、詩のラッピング事業はもちろん、他にも未だ見ぬさまざまな可能性に溢れていると確信しております。関わり方もさまざま。書くのもよし、読むのもよし。何か作ったり交流しても良い。詩と何かしらの接点を持てば幸せ。そんな関わってくださる方を一人でも多く増やしてまいります。だから、詩のあらゆる可能性を信じ、詩と関わる人を一人でも多く増やしています。

 実は、このビジョンの言葉も未だ100パーセント納得いっているわけではありません。そもそもこの文章があまり詩的な美しさがありませんよね(笑)暫定的なものです。今後、事業を進める際に、じっくり考え、仲間と話しながら、より洗練化していけたらと思っています。

今後の目標〜鉤括弧付きの「ポエマー」だった私へ〜

 現在は大きく3つのことをおこなっております。①現代詩のアップデート事業②イベント事業③学術研究/支援です。①は詩のラッピング事業の準備はもちろん、詩の朗読の新たな形態を検討しております。②は西原先生という強力なパートナーと「日本の名詩」を読む講座に力を入れております。③は、自由詩を映像で表現するワークショップの教育効果を検証中です。また、様々な現代社会に対して、詩だからこそできることを、渋谷区を拠点とした社会福祉活動に参画しながら模索しております。

 そして今後の夢を書かせていただきます。まず、私個人の小さな夢ですが、自分の詩集を発行してみたいです。高校の時に「ポエマー」と呼ばれた際、命名してくれた子に悪意はありませんでしたが、どこか気恥ずかしかったです。そこから自然と「ポエマー」からは距離を無意識にでも取ってしまい、気がついたら言語表現をやめていました。そしてそれは今なお、何か書いたときにすk添い評価を気にしてしまっていることもあります。詩集を発行しても売れないという状況もあるかもしれません。だから、PoetryFactoryでしっかり詩を学んで、考え、自信を持って私の詩集を世に出すことが夢です。きっとそんな日が訪れた頃には、詩を取り巻く状況は良いものになっているでしょう。
 次に、中くらいの夢ですが、未だ詩の魅力に出会っていない人に、詩の楽しさを伝えたいです。公教育ではなかなか詩の授業の時間は多くありませんでした。受験に出づらいこともあるのかもしれません。大学でも同様で、文学部入門などの授業を取っても、特に日本の近代詩以降の話はシラバスにはなかったと記憶しています。もちろん教育リソースは限られていますし、なんでも教えれば良いというものでもありません。それでも未だにかつての私のように「ポエマー」と呼ばれてなんだかやめてしまうという人はいるのではないかと思います。「俳句甲子園」ができたことで多くの高校生が俳句を学び、大会を目指しているように、様々なきっかけで雰囲気を変えることができると思います。PoetryFactoryの事業が、詩の楽しさや魅力を広く伝え、詩を盛り上げることができればと考えています。
 最後に、詩人の多くが現在詩を書いて収益を成り立たせることができていません。もちろん全て仕事にする必要があるというわけではないですが、文化を保つためにも市場規模を大きくできればと考えています。それは日本国内はもちろんですが、海外に日本の詩の魅力を発信したり、ビジネスの機会を作ることかもしれません。

 だから大きな声で言いたいのです。詩は恥ずかしくないんだよ。あなたの詩を聞かせて!

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