明快な午後          平井達也

缶詰のなかに私の身体がある
缶切りの刃を当てる
「外からだ」
窓を細く開けて汲み取りの人が金を置いていく

缶蓋の裂け目越しに私と目が合った
缶蓋の裂け目越しに
汲み取りの人と目が合った
御用聞きみたいな前掛けをして
なかの私を憎んでいるのは汲み取りの人か私か

金を豚の貯金箱に
「豚はいい」
いつでも割れば中身を取り出せる
缶はなかなかそうはいかない
とはいえ私も外に出たいのか
缶切りの刃をきこきこと
鳴らしているのが好きなだけではないのか

汲み取りの人は汲み取りもせず去ってしまう
私は汲み取りの人を誘って
豚を食べたかったのに
私を食べたかったのに
前掛けを丸めたかったのに
缶切りの刃をきこきこ
「外からだ」
細く開けられた窓から
つぎの誰かが覗いている