ナマ

逸見猶吉

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徹夜の大道はゆるやかに異様にうねり、うねるままに暗暈の、氷る伽藍のはてに沈まうとする。道は遠くこの一筋に尽きて、地と海との霾然たる、また人間の灰神楽。飛び交ひなだれ堕ちる星晨や殺気のむらむらや、それら撃発する火のやうな寂しさのなかに、己は十字火に爛れた生まをつき放さうとするのだ。おお、集積の眼! 不眠の河となつて己を奪つたすゑは、むざんに溷濁の干潟に曝し、滄々たる季節の下にいまとはなつたが、挑みかからうと己みづからが空をつく。何者へ対つてか、嗤へ、長年漂泊にあらび千切れた胸の底に捉へやうとする、生きがたい、夢の燔祭。埓もない見てくれの意匠も旧い日のことになつた。 神々といふあの手から離れてここに麻のやうな疲れが横たはる。 あたらしひ希ひを言へと、誰がみ近く呼ばふのだ。 氷霧に蝕む北方の屋根に校倉風の憂愁を焚きあげて、屠られた身の影ともない安手の虚妄をみてとつたいま、なんと恐ろしいものだけだらうか。原罪の逞い映像にうち貫かれた両の眼に、みじろぎもなく、氷雪いちめんの深い歪みをたたえて秘かに空しくあれば、清浄といふ、己はもうあの心にも還る事はできないのだ。沍寒の夢はつららを砥いで、風は陣々と滲みいるやうにあたりを廻りはじめてゐる。内から吹きあげる血の苦がい、灼けるやうな飛沫が叫ぶ、とうてい身はかわしきれないと。善哉! 人の闘ひはまだつづく。

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