かの日の歌【二】

漢那浪笛

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     ◉ 音なき秋の空をながめて、 木の葉は淡き吐息をもらし、 色みな、悲しきメロディなり。 時のまに/\泣きすぐる風に、 調べはいたく、狂ひわなゝき、 自然の胸の痛みは、更に深し。 黄ばめる木の葉は、翼をふるひ、 暗をもりたる、谷をみおろし、 渦まきながら、果ては消えゆく。      ◉ こゝちよき南の朝、 空は薔薇色の絹をのべ、 いろ鳥の歌は、若かき恋のごとく、 珠の響きをもてふるへり。 眼ざめし軟風、払手柑の花咲く 泉のほとりに、たわふれば、 かぐわしき名香、四方に散じ、 草葉にむすぶ露も、はら/\と散る。 あわれ、ユウカリ樹の下に、 たをやの髪を手にまきて、 若かき恋の別れを告げし、曙も、 今は、浮刻の如く、空にうつらふ。      ◉ なぎたる海の如き小夜なか。 香ひよき酒にさめて、 物すごき森の奥に、 極楽鳥の声をきくとき、 心は新らしき悲しみの眼をひらく。 南極星のなゝめに傾むき、 椰子の葉影にふるゝ頃まで、 色あせし唇に、「かの日の歌」をなせど、 たへなる音もなく、息は糸のごとく衰ろへ、 果敢なき涙して、喜びは吾れをさかりゆく。      ◉ 涙ぐみたる植民地の空。 あぢきなき労働を終へて、 榕樹の影に息ふ黄昏よ! 息ふかき鐘の音は、愁人の声を偲ばせ、 収穫しさゝやかな穂束をながめて、 ………かたパンを食ふに似たる生活を思ふ。

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