早春の森

近藤栄一

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森よ、 俺は又やつて來たぞ、 眞冬の間は仕事に追はれたり 寒かつたりしたもので つひ御前の顔を見なかつた。 森よ、 すつかり冬枯れして仕舞つたな、 常盤木の外 葉つぱ一つ木に留めて居ない その細つこい幹を すんなりと靑空に伸してゐるな、 いゝ氣持に寐足りで 充分のびをしてゐる樣だ。 常盤木よ、 御機嫌よう、 俺は御前に挨拶をする 御前は相變らずだな、 御前はちつとも弱つて居ないな、 昨年の樣に元氣だ 俺は御前の樣にどつしりと 落付きのある生活がしたい、 御前は樹木の中の哲學者だ、 俺の樣なうき〓〓した感情家には 御前の樣な男が一番恐ろしい。 椿の花 御前は何と云ふ綺麗さだ、 御前は哲學者の内での感情家だ 哲學者の中での藝術家だ。 なつかしい花よ。 土よ 御前は未だこんなに寒いのに はだかだね 御前は着物を着て居ない 戀人の前の女の樣に、 赤子に對する母親の樣に、 御前は何と云ふ元氣で美しいのだ。 それでこそ御前は母なる大地と呼ばれるのだ。

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