口笛

野呂喬

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もう山裾はカスリだ。 切り株の根元で赤土が笑ふ。 白樺林に鳴る薄氷のくずれおと 寂しさをまぎらさうと裏山へ出た僕の 頰をなぶる柔かい風。 口笛を吹かうか。 春の匂ひがくる。 わな〓〓と木枯におびいた枝々も 眞新らしい喜びに碧くふくれてゐる。 なべてもの芽生。 おお、 春よ。 春 いたむ木肌も癒へる空だ。 切株の上にあがらう。 おゝい。 みるがいゝ。 手を翳せば陽は西。 ほのかな夕まぐれ。 遙かに白い河がある。 たゞ白々と ぢつと想ひがゆたかにくる。 あゝ、 濡れた胸に湧く明るいのぞみ いつしか消えはてた寂莫だ。 かゞやく心。 ぴちぴち脈打つてくる僕のからだも おゝ、 ふくよかな胸だ。 たからかに木魂する口笛だ。 聽け林よ。

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