光
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“Hail, holy Light, offspring of Heaven, First-born !
Or of the Eternal coeternal beam !”
―Milton.
くしき天地の靈となり
我世にありて道となり
心にありて智慧となり
迷を破り暗を逐ひ
望をおこし愛を布く
光仰ぐもたふとしや。
清くいみじく比なく
おほ空高く星に照り
下かんばしく花に笑み
虹のなゝ色ちごのため
西の夕榮老のため
染むる光のたふとしや。
高きは山か山よりも
清きは水か水よりも
露はうるはし露よりも
花はかぐはし花よりも
すぐれてくしき比なき
光仰ぐもたふとしや。
水の初めて湧くがごと
ちごの産聲擧ぐるごと
シオンの琴の震ふごと
天使の空を飛ぶがごと
とはに新たにまことなる
光仰ぐもたふとしや。
アルハ、オメガを身に兼ねて
今あり後あり昔あり
妙華花咲く池の岸
シナイ雲湧く峯の上
彌陀もエホバもとこしへの
光のうちにほゝゑみぬ。
獨り我世に許されし
光のあとを眺むるも
夜は千萬の星の色
あけぼの白く雲われて
明星のまみ閉づるとき
照るもまばゆし旭日影。
緑りしづけき峰の上
いみじくゑめるさま見れば
「神のうひご(一)ぞ忍ばるゝ
「魔界の旅(二)の終るとき
ふたりの道にあらはれて
照らすは清き朝の波。
暮は遠やま西の山
「浮世もやすめ」夕光り
くれなゐ染めて沈むなり
かくや命の消えんとき
かくやむくろを拔け出て
魂の他界に去らんとき。
夜の黒幕たれこめて
微かに星のきらめくを
焔の海と誰かしる
光まばゆき照る日影
無限の空の大海の
一しづくと誰か見る。
照る日照る日の限なき
碧りのをちのおほ空は
光の流れ色の波
溢れぬ隈もなかるべく
あらし耀き風てりて
百重の綾も織りぬべく。
そのおほ空のたゞなかに
わが想像の見るところ
緑は消えて金色の
光まばゆし天の關
もゝの寳を鏤めて
鑄なすかどを過ぎ行けば。
空かんばしく花降りて
行く大水の音のごと
響くは天の愛の歌
流るゝ霞くれなゐの
春とこしへに若うして
風は優鉢羅の花の香か。
嗚呼美はしのまぼろしよ
現實のあらしつらければ
かざしの花の露のごと
脆く碎けて跡ぞなき
今わが歸る人の世に
夢は空しきものなりき。
兩羽鋭どくあまがける
天馬の鞍に堪へかねて
下界に落ちし塵の子(三)よ
恨はあはれなれのみか
まぼろし消て力なく
今こそ咽べ我琴も。
こゝの光に暗まじり
こゝのうま酒澱にがし
こゝなる戀に恨あり
こゝなる歌に涙あり
「自然」は常にほゝゑめど
世は長への春ならず。
花は光に鳥は香に
いざよふ雲は夕づゝに
そよふく風は朝波に
替はすは愛のことのはか
「自然」は常にほゝゑめど
世は長への春ならず。
見よや緑りの川柳
更けて葉越しに青白く
片破月の沈むとき
見よやみそらに影曳きて
恐ぢ驚ける魂のごと
流るゝ星の落つるとき。――
夢より淡く「北光(四)の
光微かに薄らぎて
氷の山にかゝるとき
あるは斗牛の影冰る
悲き光波のへに
破船の伴の望むとき。――
夕暗空に聲もなく
影もわびしく稻妻の
またゝくひまに消ゆるとき
誰か憂ひに閉されて
望む光の淋しさに
我世の樣をたぐへざる。
もゝとせ千歳秋去らば
樂土は實となるべしや
人と人との爭に
我世の惱絶えざらば
花たが爲めの薫りぞや
星たが爲めの光ぞや。
弱き脆きをしへたぐる
あらびを見るもいつまでか
悟の光暗うして
時の徴候は分かねども
望めわが友いつまでか
「力」は「正」に逆ふべき。
さればうき世の雲は晴れ
つるぎは銷けて、天日の
光と照らんあさぼらけ
人の心に恨なく
邦の間に怒なく
我世の上にあらびなく。――
愛と自由と平等の
まことの光かゞやきて
天の王國來るとき
嗚呼其時をまちわぶる
友よもろとも手を引て
薄暗の世をたどらまし。
(註)(一)ミルトン失樂園第三篇
(二)ダンテ淨罪界第一章
(三)ベラロホン
(四)「オーロラ、ボレアリス」
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