しちめん様のまつり
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村の婆さん達二十餘人が寺に集つて、
けふはしちめん樣をまつる、
しちめん樣とは、宗祖日蓮が〓化した七面山の大蛇だ
さうで、
身延では名代なものだといふはなしだ。
燒酎に醉つぱらつてるおてる婆さんは、
昔自慢にしたらしい素足を投げ出して、
『なんめんほうれんぎよう、』とくだをまく、
そしてぢつと眼を据えながら、
太鼓の音にききほれる。
光吉の婆さんがゐた時には、
ふたり相棒で賑かだつたといふが、
を暮してゐる、
そしてくだをまきながら、
若い者達を罵倒しながら、
法華の信仰に日も足りない。
いまはひとりでやつぱり强い酒を呑み、佛いぢりに日
其外二十餘人の婆さん達も、
酒は呑む呑まぬいろいろあらうが、
やつぱり法華の門に三昧する人達だ、
そして今宵はしちめん樣のために、
無智にして無垢なる信仰を捧げる。
おお、自分はふしあなから覗いて、
うたがのない、唯信ずるがための彼等を見る、
そしてその天眞爛漫たる態度を見る、
彼等はこの集りが果てて歸る時、
五合の米を一合の赤飯の握めしとかへことして、
いそいそと歸つて行くといふことだ、
おお、かゝる安慰と快樂とは、
都會のもとめ得られぬ田園の美祿であらう。
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