發車前(六月二十七日)

福士幸次郎

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低い空はぼんやりと街の灯をうつして 薄月に小雨が降り出した 夜行列車の振鈴は鳴り渡つて 一時に動みはじめる群集の呼び聲 ああ私はどこへゆく? ぞろぞろと改札口を出る群集 かすかな眩暈からふと目がさめて 私はベンチを離れた ああ私はどこへゆく? ただ一人うちしをれて歩むプラツトフオオム 鎖した歎きは何時までもほどけず ただ一人うちしをれて歩むプラツトフオオム 人混みにときめかぬ處女の胸 其の胸は病みおとろへた私の胸にある 其の悲哀は時を打つ振子のやうに 術なげに力なく時を打つ振子のやうに 思ひ出しては鉦をならす その追憶は病みおとろへた私の胸にある ああ、あなたは今どこにゐる? うすむらさきに吐息する白熱燈 あなたの微笑した顏はどこにある 人影がいり亂れる蒼青なプラツトフオオム たよりない人生に 嘆息はほろびず 世にない人に くちびるはふるへる さびしくも唯だ一人どこへゆく? 薄月に小雨が降り出して ほのあかるい夜の空 さびしくも唯だ一人どこへゆく?

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