夕映の中へ

舟川栄次郎

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裏の田が刈られてから 雀どもは朝から庭へきて 落葉を踏む音がカラカラとなる 何が澄んだ快よい音樂でもきいてゐるやうだ 漁村へつづく白い道 したむら ゆるくペタルを踏んで若者は流行唄をうたひ 靴をならして二人の紳士が哄笑つていくが それを道の端へよけて待つてゐた老婆に 會釋する氣も起らないほど そんなにそんなに彼等は得意の世界にゐるのか この何か泌み入る晩秋の夕陽ざしの中を歩きながら- 寺參りから歸るらしい村人 實際生活のことで頭おもたく默してゐたあの人達が いま左半身に夕陽をうけて うつむきかげんに語り合つていく 枯れた草むらにまだ生きのこつてゐた鳴き虫でもみつけたか さつきまで自分のところへ學習にきてゐた女の子らが 翅でもさするやうな手ぶりをしてゐる みてゐるとそこらからなつかしいものが流れてきて ほろりと胸のあたりを濡らすのだ いつの間にきてゐたのか 書棚から本を引出したまま保久も戶外を見てゐる 坊がゐたの 私は保久を抱きあげて庭から夕映への田ん中へ出ていく-

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