蟻地獄

萩原朔太郎

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ありぢごくは蟻をとらへんとて おとし穴の底にひそみかくれぬ ありぢごくの貪婪の瞳に かげろふはちらりちらりと燃えてあさましや。 ほろほろと砂のくづれ落つるひびきに ありぢごくはおどろきて隱れ家をはしりいづれば なにかしらねどうす紅く長きものが走りて居たりき。 ありぢごくの黒い手脚に かんかんと日の照りつける夏の日のまつぴるま あるかなきかの蟲けらの落す涙は 草の葉のうへに光りて消えゆけり。 あとかたもなく消えゆけり。

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