南の海へ行きます

萩原朔太郎

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

ながい疾患のいたみも消えさり、 淺間の山の雪も消え、 みんなお客さまたちは都におかへり、 酒はせんすゐにふきあげ、 ちらちら緋鯉もおよぎそめしが、 私はひとりぽつちとなり、 なにか知らねど泣きたくなり、 せんちめんたるの夕ぐれとなり、 しくしくとものをおもへば、 仲よしの友だちうちつれきたり、 卵のごときもの、 菓子のごときもの、 林檎のごときものを捧げてまくらべにもたらせり、 ああ、けれども私はさびしく、 いまはひとりで旅に行く行く、 ながい病氣の巣からはなれて、 つばきの花咲く南の島へと行かねばならぬ、 つばめのやうに快活に、 とんでゆく、とんでゆく。 けふ利根川のほとりに來てみれば、 しだいに春のめぐみを感じ、 雪わり草のふくめるやうに、 つちはうららにもえあがり、 西も東も雪とけながれ、 めんめんとして山峽にながれ、 光り光れる山頂さへ、 ひろごる桑の畑さへ、 さびしい病人の涙をさそふよ、 しみじみとおもへば、 故郷の冬空はれ、寂しくて寂しくてたへざれば、 いまはいつさいのものと別れをつげ、 あしたはれいの背廣を着、 いつもの輕い靴をはき、 まだ見も知らぬ南の海へあそばうよ、 その心もちも快活に、 みなさんたちに別れをつげ、 きさらぎなかばのかしまだち、 小鳥ぴよぴよと空に鳴きつれ。 ――二月一日――

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。

まだ批評・講評はありません。

南の海へ行きますの談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

南の海へ行きますに寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる