萩原朔太郎

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見よ 來る 遠くよりして疾行するものは銀の狼 その毛には電光を植ゑ いちねん牙を研ぎ 遠くよりしも疾行す。 ああ狼のきたるにより われはいたく怖れかなしむ われはわれの肉身の裂かれ鋼鐵となる薄暮をおそる きけ淺草寺の鐘いんいんと鳴りやまず そぞろにわれは畜生の肢體をおそる 怖れつねにかくるるにより なんぴとも素足をみず されば都にわれの過ぎ來し方を知らず かくしもおとろへしけふの姿にも 狼は飢ゑ牙をとぎて來れるなり。 ああわれはおそれかなしむ まことに混鬧の都にありて すさまじき金屬の 疾行する狼の跫音をおそる。

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