その襟足は魚である

萩原朔太郎

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ふかい谷間からおよぎあがる魚類のやうで いつもしつとり濡れて青ざめてゐるながい襟足 すべすべと磨きあげた大理石の柱のやうで まつすぐでまつ白で それでゐて恥かしがりの襟足 このなよなよとした襟くびのみだらな曲線 いつもおしろいで塗りあげたすてきな建築 そのおしろいのねばねばと肌にねばりつく魚の感覺 またその魚類の半襟のなかでおよいでゐるありさまはどうです ああこのなまめかしい直線のもつふしぎな誘惑 そのぬらぬらとした魚類の音樂にはたへられない あはれ身を藻草のたぐひとなし はやくこの奇異なる建築の柱にねばりつきたい はやく はやく この解きがたい夢の Nymph に身をまかせて。

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