人傑地霊

逸見猶吉

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巻きあげる竜巻を右とみれば きまつて鬼の仕業と信じ 左に巻き上がる時 これこそ神の到来といふ かかる無辜にして原始なる民度の その涯のはて 西はゴビより陰山の北を駆つて つねに移動して止まぬ大流沙がある それは西南の風に乗つて濛々たる飛砂となり 酷烈にしていつさいの生成に斧をぶちこむ 乾燥亜細亜の一角にきて 彼はこの土地を愛さずにゐられない 目には静かな笑ひを泛べ吃々として物を言ふ 熱すれば太い指先は宙に描がかれ それはもう造林設計が形の真に迫る時だ 彼は若く充実せる気力にあふれ 喜びも苦しみも ともに樹々のいのちとあるやうに見える 樹々は彼の幅ひろい胸をとりまき 樹々はみな彼の愛をうけついで向上する まことに愛は水のやうに滲透する 彼はふり濺ぐはげしい光を浴びながら さうしてゆつたりと耕地防風林の中に入つてゆく 私は彼とともに人傑地霊を信じる者だ

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