神の犬

逸見猶吉

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ぎいんとした岩場の空が死んで視るかぎり 燦々たる微塵群の天幕は醒めてゐる 鞴のやうな息吹きに 翳をひく時間のながれ 挑みあふ千の枝々に血を滴たらせ 雪の切々たる抑制に ただ前へ目をおとす 背におふ花の印象と燃えあがる灰の錯乱と―― 吠えることを忘れ ああ ひとりなる神の犬よ 荒々しい夢のかたまりとなつて いまは燼のやうに動くすべをしらない 身を退いて 忍べよ 眼は鹹水に漬かるべし 剛直の毛並に油をそゝぎ 牙にはそれ伐られざる荒蕪地を横たふべし 耿々たる大理石の粉をあび ひたすら 炎上せる季節のましたに血を整へよ ふたたび夢をゆりおこせよ きびしい岩場の大天井にしづかにむげんの闘ひが映る また恐ろしい時間のながれか 陶酔の歌 風に千切れて

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