逸見猶吉

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重い油をさすやうに つめたく秘密にとり縋るもの この手はひさしく慄えるペン軸を必死と握つてゐるのだが 苦がいインキは海の気配にそそがれて やうやく乾いた血いろの底にしづんでゆく 日のひかりはこの手にとどかず この手は叫ばずおのれに堪へ 沸騰するくらいナヂールの 大回転のしたにある 艱める翳に伏したままさうしてばらばらと頁を繰るのだが 水のいろが鹹くぶきみに漂ひながれて 虫をまいたやうに凶はしい 時をりあの強大なむなしさを孕む幕となつてなだれると 斑らの網に非情の鱶はみえかくれ 翳を払はふとするこの手もやがて見失はれる

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