童話

川路柳虹

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路にある一本の樹木、 その葉は黄金、 その幹も黃金、 その枝も梢も黄金、 しかし春がきても秋がきでも その花も咲かず、 實も結ばず、 ただ風が綠に灰いろに その樹をめぐるばかりに年が經つた。 園丁が或る日不思議なその樹を見て 『さても見ごとな樹でありながら 花の咲かず實のならないのは きつと培糞が足りないからであらう』と さつそく土を掘り下げてそこへ培糞を積んだ。 - さて、 來年の春は見ごとな花が咲かうと。 やがて春になり、 その葉の金の耀きは 空を煙らすばかりに眩しく輝き出した、 園丁は實物が手に入るやうに やがて咲くその花を待つてゐた。 けれども、 その葉の蔭には何ひとつ花らしい影さへも見られない、 その間に夏がきてその葉は凉しい影を敷いた。 園丁が思つた、『これは尊い樹に違ひない、 花は咲かなくとも育て次第で實は出來やう、 黄金の實が出來るに違ひない、 もつと培糞をやつてやらう』と、 そして丹誠な心で秋を待ちもうけた。 けれどもその樹は依然として、 實をつけないどころか 今度はその葉の光りさへ衰へたやうな氣がした。 そこで園丁は腹だたしく 『こんな莫迦々々しい樹があるものか 人が折角丹誠するのに、 實も花もつけないとは情ない、 こんな樹はみんな葉をむしつてやれ、 もう育てる必要があるものか』といきなり その黄金の葉を一枚樹からもぎ取つた、 すると何たる奇蹟であらう、 その樹は音を出し、 身震ふまでその光りは園丁の眼を射つて 幹から明らかな言葉が出た。 『摘みとれ、 摘みとれ、 永劫に摘みとれよ』と。

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