雨のふる日
本文の表示
わたしは思ひ出す。
緑青いろの古ぼけた硝子戸棚を、
そのなかの賣藥の版木と、硝石の臭と、…………
しとしとと雨のふる夕かた、
濡れて歸る紺と赤との燕を、
しとしとと雨のふる夕かた、
蛇目傘を斜に疊んで、
正宗を買ひに來た年増の眼つき、…………
びいどろの罎を取つて
無言つて量る…………禿頭の番頭。
しとしとと雨のふる夕かた、
巫子が來て振り鳴らす鈴…………
生鼠壁の黴に觸る外面の
人靈の燐光。
わたしは思ひ出す。
しとしとと雨のふる夕かた、
叉首を拔いて
死なうとした母上の顏、
ついついと鳴いてゐた紺と赤との燕を。
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
雨のふる日の談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
雨のふる日に寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。
まだ批評・講評はありません。
ログインすると批評・講評を書けます。