櫨の實

北原白秋

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冬の日が灰いろの市街を染めた、―― めづらしい黄ろさで、あかるく。 濁川に、向ふ河岸の櫨の實に、 そのかげの朱印を押した材木の置場に。 枯れ枯れになつた葦の葉のささやき、………… 潮の引く方へおとなしく家鴨がすべり、 鰻を生けた魚籠のにほひも澱む。 古風な中二階の危ふさ、 欄干のそばに赤い果の萬年青を置いて、 柳河のしをらしい縫針の娘が 物指を頬にあてて考へてる。 何處かで三味線の懶い調子、―― 疲れてゆく靜かな思ひ出の街、 その裏の寂しい生活をさしのぞくやうに 「出の橋」の朽ちかかつた橋桁のうへから *YORANBANSHO の花嫁が耻かしさうに眺めてゆく。 久し振りに雪のふりさうな空合から 氣まぐれな夕日がまたあかるくてりかへし、 櫨の實の卵いろに光る梢、 をりをり黒い鴉が留まつては消えてゆく。 * 嫁入のあくる日盛裝したる花嫁綿帽をかぶりて先に立ち、澁き紋服の姑つきそひて、町内及近親の家庭を披露してあるく、風俗花やかなれども匂いと古く雅びやかなり。 郷里柳河沖ノ端の写真

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