北原白秋

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海の霧にほやかなるに 灯も見ゆる夕暮のほど、 ほのかなる旅籠の窓に 在るとなく暮れもなやめば、 やはらかき私語まじり 咽びきぬ、そこはかとなく、 火に焼くる薔薇のにほひ。 ああ、薔薇、暮れゆく今日を そぞろなり、わかき喘に 図らずも思ひぞいづる。 そは熱き夏の渚辺、 濡髪のなまめかしさに、 女つと寝がへりながら、 みだらなる手して結びし 色紅き韈の紐。

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