孟宗と月
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さわさわと揺るるものあり。午夜ふけて揺るるものあり。わが窓の硝子戸の外、真透せば月に影して凍え雲絶えず走れり。円かなる望月ながら、生蒼く隈する月の、傾けばいよよ薄きを、あな寒や揺るる竹あり。孟宗の重きしだれの重なりのその上に抜けて、ただひとり揺るる秀のあり。目か醒めし、夜風か出でし、さわさわと揺れて遊べり。しだれつつ前にうしろに、照りかげり揺れて遊べり。円かなる望月ながら生蒼く隈する月の飛び雲の叢雲が間、ふと洩れて時をり急に明るかと思ふ時なり。目に見えてさわさわさわと、照り浮ぶ孟宗の、あな、一きは強き、狐光のその月に、さながら生きて踊るかに、近明りして勢ひ舞ふ、かと見れば、また、何か暗く薄かげりして、揺らぎ止み、揺らぎ騒立つ。此夜さや、夜鳥も啼かず、藪かげの隣の寺もしんしんと雨戸鎖したれ。時として川瀬の音の浪の音と響き添ふのみ。それもただ遠し、気疎し。あなあはれ、この夜の山に、何しらず目のさめしもの、我のみか、揺れそよぐあり。揺れそよぎ、独り遊ぶと、揺れそよぎ、この目の外に、また、さわさわと音立ててゐる。
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