岡の鉾杉
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わが宿の岡のなぞへに杉いくつ屯せりけり、せうせうと屯せりけり。鉾杉のひとむら木立鉾杉の鉾を並べて、この朝明しぐるる見れば、霧ふかく時雨るる見れば、うち霧らひ、霧立つ空にいや黒くその秀うかび、いや重く下べ鎮もり、いや古く並び鎮もる、凡てこれ墨の絵の杉、見るからに寒し厳かし、かうがうし、寂し崇高し。あなあはれ、岡の鉾杉、をちこちの小竹のむら笹、柿もみぢ、梅が枝の蔦、とりどりに色に出づれど、神無月すゑの時雨に濡れ濡れてその葉枯れず、落葉せず、透かず、薄れず、ただ上べわづか赭みて天鵞絨の焦茶いろすれ、深ぶかと黒くか青く、常久に古び鎮もる。寂しくも寂しき姿、堪へ堪へて常立つ心。あなあはれ冬の鉾杉、海ちかき岡の鉾杉、鉾杉の渦成す霧に、涯知れぬ海も見わかず、ひさかたの空もえわかね、時をりは渡りの鳥のはぐれ鳥ちりぢりと落ち、羽重の一羽鴉も飛びなづみややに来て揺る。あなあはれ、雨の鉾杉、見てあれば幽かに揺れて、ふる雨に幽かに揺れて、ただせうせうと音たてにけり。
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