冷めがたの印象

北原白秋

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あわただし、旗ひるがへし、 朱の色の駅逓馬車跳りゆく。 曇日の色なき街は 清水さす石油の噎、 轢かれ泣く停車場の鈴、溝の毒、 昼の三味、鑢磨る歌、 茴香酒の青み泡だつ火の叫、 絶えず眩めく白楊、遂に疲れて マンドリン奏でわづらふ風の群、 あなあはれ、そのかげに乞食ゆきかふ。 くわと来り、燃えゆく旗は 死に堕つる、夏の光のうしろかげ。 灰色の亜鉛の屋根に、 青銅の擬宝珠の錆に、 また寒き万象の愁のうへに、 爛れ弾く猩紅熱の火の調、 狂気の色と冷めがたの疲労に、今は ひた嘆く、悔と、悩と、戦慄と。 あかあかとひらめく旗は 猥らなるその最終の夏の曲。 あなあはれ、あなあはれ、 あなあはれ、光消えさる。 四十年十一月

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