水路

北原白秋

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ほうつほうつと螢が飛ぶ………… しとやかな柳河の水路を、 定紋つけた古い提灯が、ぼんやりと、 その舟の芝居もどりの家族を眠らす。 ほうつほうつと螢が飛ぶ………… あるかない月の夜に鳴く蟲のこゑ、 向ひあつた白壁の薄あかりに、 何かしら燐のやうなおそれがむせぶ。 ほうつほうつと螢が飛ぶ………… 草のにほひする低い土橋を、 いくつか棹をかがめて通りすぎ、 ひそひそと話してる町の方へ。 ほうつほうつと螢が飛ぶ………… とある家のひたひたと光る汲水場に ほんのり立つた女の素肌 何を見てゐるのか、ふけた夜のこころに。

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