月の出前

北原白秋

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夜はくらい。沖はしづんで、 寄せ波の音ばかりする。 闌けて聴く浪の音には モーターのとどろきもする。 ぬか星に犬も吼えてる。 セメン樽ころがしてゐる。 月の出はまだまだ遅い。 横雲の断れる寒さだ。 満潮の闇の音には 饑そそる騒めきがある。 ただ一つ、向日葵か、いな、 突堤の、線の灯あしだ。 ああ、浜だ、燐の眼をした 人がゐる。ほういほういだ。

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