夕日

北原白秋

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赤い夕日、―― まるで葡萄酒のやうに。 漁師原に鷄頭が咲き、 街には虎列拉が流行つてゐる。 濁つた水に 土臭い鮒がふよつき、 酒倉へは巫女が來た、 腐敗止のまじなひに。 こんな日がつづいて 從姉は氣が狂つた、 片おもひの鷄頭、 あれ、歌ふ聲がきこえる。 恐ろしい午後、 なにかしら畑で泣いてると、 毛のついた紫蘇までが いらいらと眼に痛い。………… 赤い夕日、―― まるで葡萄酒のやうに。 何かの蟲がちろりんと 鳴いたと思つたら死んでゐた。

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