天國

葛巻星淵

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神の國は何れの時に來る乎とパリサイの人問ひければ、 イエス答へて言ひけるは、 神の國は顯はれて來る者に 非ず、 此處に見よ彼處に見よと人の言ふべき者に非ず。 夫れ神の國は爾等の衷に在り。 (路加傳第十七章) 靜けき村の片端 に 〓き流を前にして、 小さく立てる茅葺の 百姓住居の家一つ。 貧しき家と見ゆれども、 內には愛の和氣滿ちて 讃美の聲も漏るるなり。 夕食も今や終へぬらし、 父、母、 娘うち揃ひ、 椽側に出でて納凉せり。 〓き笑ひの其中 に 娘の唱ふ歌聞けば、 『我が家を、 賤が伏屋と、 人は言へど、 神住みませば、 是れ天つ國』。 他人の悲を悲む情は 猶是れ人の情なり、 他人の喜を喜ぶ情は 正に是れ神の情なり。 他人の惡を憎む心は 猶是れ人の心なり、 他人の善を好む心は 正に是れ神の心なり。

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