月夜の悲しみ

三木露風

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靜かなる冬の木立に 月光は頭 を垂れぬ。 風もなし、 かかる一夜、 森に續けるほの白き路のかたへを 何處へか······はた、 いづこより······馬車ぞ走れる。 うるはしく黑き馬車ただひとつ 都はづれの近郊の月夜の路を- をりから響森に入れば 行手には嵐かすかに····· また聞く、 荒き水の音の そことしもなく歎けるを。 夢を、 うつつを、 かくてただ 音樂のごと月光は森を照せり。 聽きとれよ······ そのひびき、 知れよ······わが 心の在處。 靑ずみわたる冬の空、 その靜けさに君はあり、 我はあり 嵐の或は歎かひの 水の音の中に君を聽く、 み なか 我を聽く。 なほも消え消え馬車の音の 胸を野原を近郊を月ふる中を うかび駛りつ、 はてしなし。

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