蠕虫舞手

宮沢賢治

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 (えゝ 水ゾルですよ   おぼろな寒天の液ですよ) 日は黄金の薔薇 赤いちひさな蠕虫が 水とひかりをからだにまとひ ひとりでをどりをやつてゐる  (えゝ 8 γ e 6 α   ことにもアラベスクの飾り文字) 羽むしの死骸 いちゐのかれ葉 真珠の泡に ちぎれたこけの花軸など  (ナチラナトラのひいさまは   いまみづ底のみかげのうへに   黄いろなかげとおふたりで   せつかくをどつてゐられます   いゝえ けれども すぐでせう   まもなく浮いておいででせう) 赤い蠕虫舞手は とがつた二つの耳をもち 燐光珊瑚の環節に 正しく飾る真珠のぼたん くるりくるりと廻つてゐます  (えゝ 8 γ e 6 α   ことにもアラベスクの飾り文字) 背中きらきら燦いて ちからいつぱいまはりはするが 真珠もじつはまがひもの ガラスどころか空気だま  (いゝえ それでも   エイト ガムマア イー スイツクス アルフア   ことにもアラベスクの飾り文字) 水晶体や鞏膜の オペラグラスにのぞかれて をどつてゐるといはれても 真珠の泡を苦にするのなら おまへもさつぱりらくぢやない    それに日が雲に入つたし    わたしは石に座つてしびれが切れたし    水底の黒い木片は毛虫か海鼠のやうだしさ    それに第一おまへのかたちは見えないし    ほんとに溶けてしまつたのやら それともみんなはじめから おぼろに青い夢だやら  (いゝえ あすこにおいでです おいでです   ひいさま いらつしやいます   8 γ e 6 α   ことにもアラベスクの飾り文字) ふん 水はおぼろで ひかりは惑ひ 虫は エイト ガムマア イー スイツクス アルフア    ことにもアラベスクの飾り文字かい    ハツハツハ  (はい まつたくそれにちがひません    エイト ガムマア イー スイツクス アルフア    ことにもアラベスクの飾り文字) (一九二二、五、二〇)

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