宮沢賢治

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なぜ吠えるのだ 二疋とも 吠えてこつちへかけてくる  (夜明けのひのきは心象のそら) 頭を下げることは犬の常套だ 尾をふることはこはくない それだのに なぜさう本気に吠えるのだ その薄明の二疋の犬 一ぴきは灰色錫 一ぴきの尾は茶の草穂 うしろへまはつてうなつてゐる わたくしの歩きかたは不正でない それは犬の中の狼のキメラがこはいのと もひとつはさしつかへないため 犬は薄明に溶解する うなりの尖端にはエレキもある いつもあるくのになぜ吠えるのだ ちやんと顔を見せてやれ ちやんと顔を見せてやれと 誰かとならんであるきながら 犬が吠えたときに云ひたい 帽子があんまり大きくて おまけに下を向いてあるいてきたので 吠え出したのだ (一九二二、九、二七)

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