霾
本文の表示
冬の初めの霽れた空に、淺間山が肩を搖すつて哄笑する、ロンロンロン・ヷッハッハ・ヷッハッハ。「俺はしばらく退屈してゐたんだぞ!」そしてひとりで自棄にふざけて、麓の村に石を投げる、氣流に灰を撒き散らす。
山端に出た一人の獵師は、(彼の犬は平氣でさつさと先を急いでゐる)ちやうど彼のふり反つた鼻の先の、落葉松に話しかける。「やつたぜ、また」
高原を走る小さな電車は、折から停車場に尻ごみして、がたがたとポオルを顫はす。「これだから厭だよ、おれはもう厭だよ」そこで發車時間が五分遲れる。
淺間山は滅茶苦茶にはしやいでゐる、赤い熔岩の舌を出して、「そらもう一度」ヷハッハッハ・ヷッハッハ。朝陽をうけて、ブロンドの噴煙がまつ直ぐに背伸びする、脊伸びする、やがてままよと歩きだす。
「はてな」熊笹から笹熊が顏を出す。
四十雀が窓で啼く、窓によつて一人の詩人が、一っ時瞑想の後に、かくしから手帳をとり出す、「地よ、地よ、爾の諧謔よ、そは愛づるに足れり」
郵便配達夫がやつてくる、蝙蝠傘を携へて。
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
霾の談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
霾に寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。
まだ批評・講評はありません。
ログインすると批評・講評を書けます。