三好達治

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 冬の初めの霽れた空に、淺間山が肩を搖すつて哄笑する、ロンロンロン・ヷッハッハ・ヷッハッハ。「俺はしばらく退屈してゐたんだぞ!」そしてひとりで自棄にふざけて、麓の村に石を投げる、氣流に灰を撒き散らす。  山端に出た一人の獵師は、(彼の犬は平氣でさつさと先を急いでゐる)ちやうど彼のふり反つた鼻の先の、落葉松に話しかける。「やつたぜ、また」  高原を走る小さな電車は、折から停車場に尻ごみして、がたがたとポオルを顫はす。「これだから厭だよ、おれはもう厭だよ」そこで發車時間が五分遲れる。  淺間山は滅茶苦茶にはしやいでゐる、赤い熔岩の舌を出して、「そらもう一度」ヷハッハッハ・ヷッハッハ。朝陽をうけて、ブロンドの噴煙がまつ直ぐに背伸びする、脊伸びする、やがてままよと歩きだす。 「はてな」熊笹から笹熊が顏を出す。  四十雀が窓で啼く、窓によつて一人の詩人が、一っ時瞑想の後に、かくしから手帳をとり出す、「地よ、地よ、爾の諧謔よ、そは愛づるに足れり」  郵便配達夫がやつてくる、蝙蝠傘を携へて。

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