僕は

三好達治

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

 さう、さうだ、笛の心は慰まない、如何なる歌の過剰にも、笛の心は慰まない、友よ、この笛を吹くな、この笛はもうならない。僕は、僕はもう疲れてしまつた、僕はもう、僕の歌を歌つてしまつた、この笛を吹くな、この笛はもうならない、――昨日の歌はどこへ行つたか? 追憶は帰つてこない! 春が来た、友よ、君らの歌を歌つて呉れ、君らの歌の、やさしい歌の悲哀で、僕の悲哀を慰めて呉れ。  昨日の歌はどこへ行つたか? 思出は帰つてこない! 昨日の恋はどこへ行つたか? やさしい少女は帰つてこない! 彼女はどこへ行つたか? 昨日の雲は帰つてこない! ああ、いづこの街の黄昏に、やさしい彼女の会話があるか、彼女の窓の黄昏に、いかなる会話の微笑があるか、僕は、僕はもう知らない、春が来た、友よ、君らの歌を歌つて呉れ、君らの歌の、やさしい歌の悲哀で、僕の悲哀を慰めて呉れ。  僕は今日、春浅い流れに沿つて、並樹の影を歩いたのだ、空は曇つてゐた、僕は、野景に、遠い畑や火見櫓を眺めたのだ、森の梢に鶫が光つて飛んでゐた。風に、高圧線が鳴つてゐた。それから、いろいろの悲しい憧憬れが、僕に、僕の頬に、少し泪を流したのだ、僕は、僕は疲れて帰つて来たのだ、僕はもう追憶の行衛を知らない、友よ、春が来た、君らの歌を歌つて呉れ、君らの歌の、やさしい歌の悲哀で、僕の悲哀を慰めて呉れ。

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。

まだ批評・講評はありません。

僕はの談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

僕はに寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる