パン
本文の表示
パンをつれて、愛犬のパンザをつれて
私は曇り日の海へ行く
パン、脚の短い私のサンチョパンザよ
どうしたんだ、どうしてそんなに嚏をするんだ
パン、これが海だ
海がお前に楽しいか、それとも情けないのか
パン、海と私とは肖てゐるか
肖てゐると思ふなら、もう一度嚏をしてみろ
パンはあちらへ行つた、そして首をふつて嚏をした
木立の中の扶養院から、ラディオの喘息持ちのお談議が聞える
私は崖に立つて、候兵のやうにぼんやりしてゐた
海、古い小さな海よ、人はお前に身を投げる、私はお前を眺めてゐる
追憶は帰つてくるか、雲と雲との間から
恐らくは万事休矣、かうして歌も種切れだ
汽船が滑つてゆく、汽船が流れてゆく
艫を見せて、それは私の帽子のやうだ
私は帽子をま深にする
さあ帰らう、パン
私のサンチョパンザよ、お前のその短い脚で、もつと貴族的に歩くのだ
さうだ首をあげて、さう尻尾もあげて
あわてものの蟹が、運河の水門から滑つて落ちた
その水音が気に入つた、――腹をたてるな、パン、あれが批評だよ
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
パンの談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
パンに寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。
まだ批評・講評はありません。
ログインすると批評・講評を書けます。