壁
本文の表示
扉や窓を濡し
支柱や車輪を濡し
出ていつた音よ
仄かな調和のどこにも
響はすでに帰らない
色彩はなく
無表情の翳がうかび
しづかな匂ひがひろがり
脱落するシヤツのあとには
あやまちのごとく風が立つた
柱廊はひきつり
手すりはくづれ
静止した平面は
静止した曲面とともに
いちぢるしく暮れた
きびしく遅速をかぞへる
時差のそとに
屹立する実体もまた
ひとつの影像である
壊れた通路を水がながれ
扉や支柱の倒れるなかに
その階段はどこへ続いてゐるのか
鈍い光の輪につづられて
果はみえない
だがその一角は墜ちた
深い空間をまたぎ
おびただしい車輪は戻つてきた
そしておまへの道を走つてゐる
放らつな円心に
廻転するおまへの声がきこえる
おまへとは誰か
強烈に踏みにじられた地域に
いつはりのごとく風が立ち
振動だけが支へてゐる
眼も肩もない
幻の街よ
かぞへきれない壁や腕椅子は
悲痛によじれ
水平のまま沈んでいつただらう
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
壁の談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
壁に寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。
まだ解釈・感想はありません。
ログインすると解釈・感想を書けます。