冬さめ

室生犀星

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一日は寂しい冬の雨になつた さてわたしは机にあごつきをして 同じことばかり考へてゐる 道路が雨に濡れてゐること 燈のかげが其處にうつつてゐることなどである それゆゑ寂しいのではない ただわたしはどのやうにかういふ雨の日を送つたらよいか 時間が愉しく送れるかといふことを あれかこれかと考へてゐるのである 雨は冬になると幽暗になる わたしの室内にいつしらず いつも寺のやうな匂ひと靜かさがくる わたしはその中で 長いパイプで煙草をふかしてゐる どれもこれも愉しいことなどはない 考へあぐんで 火をさかんに起してゐるだけである わたしの瞳に火のかげがしてゐる それは誰も氣がつかない それきりで消えてしまふのである かうして一日は冬の雨でくれた 長い明日の雨が又やつてくるだらう

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