こほろぎ
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何とて鳴くや
庭のこほろぎ夜もすがら。
雨ふりそへば猶さらに
あかつきかけて鳴きしきる。
何とて鳴くや
こほろぎと問へど答へず。
夜のみならで
秋ふけ行けば昼も鳴く。
庭のみならで家のうち
くりやのすみにも来ては鳴く。
おもひ出しぬわかき時。
われに寄りそひ
わが恋人はたゞ泣きぬ。
慰め問へば猶さらに
むせびむせびて唯泣きぬ。
何とて鳴くや
庭のこほろぎ。
何とて泣くや
わが恋人。
たちまちにして秋は尽きけり。
冬もゆきけり。月日は過ぎぬ。
かくの如くにして青春は去りぬ。
とこしなへに去りぬ。
何とて鳴くや
庭のこほろぎ。
何とて泣くや
わが恋人。
われは今たゞひとり泣く。
こほろぎは死し
木がらしは絶え
ともし火は消えたり。
冬の夜すがら
われは唯泣くひとり泣く。
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