奪はれた魂

小熊秀雄

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地軸に近い何所かで うづもれた 世にも稀なる紫ダイヤを とげ/\と骨ばかりのやせこけた 悪魔たちがまるくとりまき ひからびた手を繋ぎ合ひ にやにやとした もの倦い足どりで 踊るたびにからからと音がする    ◇ ちやうどそれのやうに ちやうどそれのやうに かつて失はれた俺の魂は かつてうばはれた俺の魂は 柔かく 滑らかな琥珀の頬と 熟したザクロの唇とをもつた 美しい悪魔が 青くはげしく燃える俺の魂を しなやかな白いくすり指で さんざん何処かで 弄んでゐることであらう    ◇ しかし美しいサタンよ お前が何時か濃緑の絨氈の上に そつと置きわすれていつた 青銅の壺にはいつた 魂の小さいカケラを 俺はしつかりと握つてゐる    ◇ お前はその魂のかけらを 俺からうばひ返さうとして 夜な夜な灰色の夢に忍び いまさら傷ついた俺の魂を返し 柔らかいキスで 俺を釣らうとするのだが お前の魂のかけらが 狂はしく手に燃焼するまでも 俺はいつかな返へしはせぬ    ◇ 俺は! 俺は俺は 煖炉の焔に熱した呪詛の烙印を お前の額の白い肉に押しあて ぢりぢりと焼けたゞれる匂ひと おくれ毛の燃える匂ひを 存分に吸はしてくれるまでは お前の 魂のかけらは永遠に返しはしない   一九二三、一、一二

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