祖先の下山

小熊秀雄

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やさしい豪族は 太刀を担ぎながら山を降りて来た。 快活に、傍の道連れと語り合ひながら、 霧はふかく、雲は爛れてゐた。 其処で『日本の不思議な生活』の 深い根幹を地に植ゑた。 依然として、日本の奇怪は今でも存在し 精神の浮橋は、世界の橋に通じてゐる。 昏迷の中に驚嘆の花を咲かせよ、 幾度も私達の住居を再建しよう、 新しい土地へ下山するのだ、 新しい土地へ。 祖先のやうに明るく談笑しながら。 山の霊気は私のマントをくるみ その光りの花粉をもつて 夜光虫のやうに飾る、 世界の思想と交媒せよ。 樵夫は高い樹の傘下にある、 轟然と伐採する 樹の枝は爛れた空を掃く あらゆる日本の神事は 我等の手をもつて主宰せよ。

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