海景

小熊秀雄

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さくらんぼを喰べたい海の色よ青い色よ まなつのうみの風の色よ みな眼にしみる静かなる海景にたつて わたしは女のふとももの肉をかぢつたので わたしの義歯は とけてながれて飛んでしまつた。 あんな浅瀬に 食慾をそそる赤い魚を二ひき もつれあつて泳がしてをくのは危険だ 石を水に放つてやれ。 涼しい帆前船が浮んでゐる沈んでゐる 大きくふくれたり。小さくちぢまつたり 黄色い積荷がぴかぴか光る。 海いつぱいにひろがつてゐる軍艦に しろいしやつぽがいちれつに いかにも退屈に左右にならんでゐる ずどん……と大砲を撃つてやつたら 兵隊がまりのやうにとびあがるだらう。 太陽がくるくる廻つてゐる真夏の海景に わたしの貧乏までが水浴がしたいと 口からとびだして白眼を要求した こんなぜいたくな海景は消えてしまへ わたしにとつては無益の風景だ。

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