おつた
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花仄見ゆる春の夜の
すがたに似たる吾命
朧々に父母は
二つの影と消えうせて
世に孤兒の吾身こそ
影より出でし影なれや
たすけもあらぬ今は身は
若き聖に救はれて
人なつかしき前髮の
處女とこそはなりにけれ
若き聖ののたまはく
時をし待たむ君ならば
かの柹の實をとるなかれ
かくいひたまふうれしさに
ことしの秋もはや深し
まづその秋を見よやとて
聖に柹をすゝむれば
その口脣にふれたまひ
かくも色よき柹ならば
などかは早くわれに告げこぬ
若き聖ののたまはく
人の命の惜しからば
嗚呼かの酒を飮むなかれ
かくいひたまふうれしさに
酒なぐさめの一つなり
まづその春を見よやとて
聖に酒をすゝむれば
夢の心地に醉ひたまひ
かくも樂しき酒ならば
などかは早くわれに告げこぬ
若き聖ののたまはく
道行き急ぐ君ならば
迷ひの歌をきくなかれ
かくいひたまふうれしさに
歌も心の姿なり
まづその聲をきけやとて
一ふしうたひいでければ
聖は魂も醉ひたまひ
かくも樂しき歌ならば
などかは早くわれに告げこぬ
若き聖ののたまはく
まことをさぐる吾身なり
道の迷となるなかれ
かくいひたまふうれしさに
情も道の一つなり
かゝる思を見よやとて
わがこの胸に指ざせば
聖は早く戀ひわたり
かくも樂しき戀ならば
などかは早くわれに告げこぬ
それ秋の日の夕まぐれ
そゞろあるきのこゝろなく
ふと目に入るを手にとれば
雪より白き小石なり
若き聖ののたまはく
智惠の石とやこれぞこの
あまりに惜しき色なれば
人に隱して今も放たじ
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