揖保川にて
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水色しろき揖保川の
みぎはを染むる青草に、
牛飼ひなるる里の子を
誰し哀れと見たまふか。
堤七里に行きくれて、
脚絆解く間の夕闇を、
城のやぐらに花散りて、
老いにけるかな、この春も。
牛追ひかへる野の路に、
踏むは、紫つぼ菫、
踵すりよせ佇みて、
なげく心を知るや君。
人に別れて野にくだり、
牛追ふ子らの名に入れど、
春ゆく毎に袖裂きて
昔の夢を思ふかな。
星はいでたり、夜頃來て、
慰めを見るそのかげに、
今宵は堪へず膝をりて、
袂に顏をさしあてぬ。
ああ、和らかき眞砂地に、
蹄のあとをさはりみて、
愚なる身に人知れず、
熱き涙をそそぐかな。
たのしみもなき人の世の
寂しき境に泣かんより、
われは情ある獸の
野邊の睦びを望むなり
水色しろき揖保川の
みぎはを染むる青草に、
牛追かへる里の子を、
誰し哀れと見たまふか。
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