*師走の一日

薄田泣菫

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一 み冬となりぬ、日暮れぬ、 ひねもす森にあらびし 脚早の野分は、うしろ寒に、 そそけの髮もみだれて、 北山あたりいそぎぬ。 もとあら木立の落葉林、 木の息ごもりたゆげに、 殘りの葉こそは風にあへげ。 二 澄みつる空や、さながら ありにし戀も忘れて、 菩提樹がくれの法の苑に、 『無漏慧』にあそぶ聖の、 とわたる鳥のありなし、 いささの染をもえは許さぬ 齋戒か、――嚴の清まりは、 見るだに堪へせじ、現しごころ。 三 あな大日枝の額に、 玉冠する夕日の 光や、天なる美し眼ざし、―― 東へ、ゆるに峰越の 淡雲すべる靜けさ、 これやは終なる魂のひと日、 すずろに心ゆらぎて、 ありしを忍ぶる美き名ならし。 四 束の間なりき、夕ばえ 今はた仄にうすれぬ。 さて日は葬式の鈍に暮れて、 眞闇の墓に入るらめ。 この靜かなる臨終に、 吾や看護婦の心しりに、 日の物深さしのびて、 祕密のこころも辿らまほし。 *洛東下岡崎の里より  大比叡の方を眺めてよめる

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