魂の常井

薄田泣菫

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ああ、野は上じらむ曙の ゑわらひ浮歩む童女さび、 瑞木の木がくれに、花小草、 莖葉の下じめり香を高み、 朝蹈む陰路の行ずりに、 若ゆる常夏の邦あらば、 往かまし、わが心葉がらみに、 くれなゐ、――燃ゆる火の花と咲かめ。 ああ、世にしろがねの高御座、 美酒の香ぞにほふ御座の間に、 立ち舞ふ八少女の入綾や、 樂所のをんな樂、箜※の音の どよみよ、大海の浪とゆる 夜ながを、宴會うつ宮あらば、 ゆかまし、わが心醉ざまに、 はえある歌ぬしの名をか得め。 ああ、日は身隱れし宵やみの 木立の息ごもり、氣をぬるみ、 林精は水錆江に羽ぞ浸す 靜寂を、月しろの影青く、 ほのめく氣深さや、空室に 燈明の火ぞしめる寺あらば、 ゆかまし、わが心夜ごもりに、 天ゆく羽車や聞きつべき。 ああ、然は野に、宮に、夜ごもりに、 あくがれまどひにし日はあれど、 果しは、野ごころの伸羽して、 歸るや、なつかしき君が手に。 たゆげの片ゑまひ、優まみの うるみよ、うら若き靈魂の 旅路に熱れては、掬みつべき うべこそ、眞清水の常井なれ。

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