冬の朝のめざめ
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冬の朝なれば
ヨルダンの川も薄く氷りたる可し
われは白き毛布に包まれて我が寝室の内にあり
基督に洗礼を施すヨハネの心を
ヨハネの首を抱きたるサロオメの心を
我はわがこころの中に求めむとす
冬の朝なれば街より
つつましくからころと下駄の音も響くなり
大きなる自然こそはわが全身の所有なれ
しづかに運る天行のごとく
われも歩む可し
するどきモツカの香りは
よみがへりたる精霊の如く眼をみはり
いづこよりか室の内にしのび入る
われは此の時
むしろ数理学者の冷静をもて
世人の形くる社会の波動にあやしき因律のめぐるを知る
起きよ我が愛人よ
冬の朝なれば
郊外の家にも鵯は夙に来鳴く可し
わが愛人は今くろき眼を開きたらむ
をさな児のごとく手を伸ばし
朝の光りを喜び
小鳥の声を笑ふならむ
かく思ふとき
我は堪へがたき力の為めに動かされ
白き毛布を打ちて
愛の頌歌をうたふなり
冬の朝なれば
こころいそいそと励み
また高くさけび
清らかにしてつよき生活をおもふ
青き琥珀の空に
見えざる金粉ぞただよふなる
ポインタアの吠ゆる声とほく来れば
ものを求むる我が習癖はふるひ立ち
たちまちに又わが愛人を恋ふるなり
冬の朝なれば
ヨルダンの川に氷を噛まむ
大正元・一一
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