亡き人に

高村光太郎

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雀はあなたのやうに夜明けにおきて窓を叩く 枕頭のグロキシニヤはあなたのやうに黙つて咲く 朝風は人のやうに私の五体をめざまし あなたの香りは午前五時の寝部屋に涼しい 私は白いシイツをはねて腕をのばし 夏の朝日にあなたのほほゑみを迎へる 今日が何であるかをあなたはささやく 権威あるもののやうにあなたは立つ 私はあなたの子供となり あなたは私のうら若い母となる あなたはまだゐる其処にゐる あなたは万物となつて私に満ちる 私はあなたの愛に値しないと思ふけれど あなたの愛は一切を無視して私をつつむ 昭和一四・七

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