智慧

竹内勝太郎

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白晝の渚を唯一人步いてゆく、 足もとに砂は崩れ、 海草はさらわれ、 純白の貝殻はきらきらと波の下に消ねる。 大空の下の荒磯を歩いてゆく、 沖には難破船の帆檣が搖れ、 かなたの砂丘の上にたわむれる子供等は、 息を限りに叫ぶけれども、 その聲は悉く風に奪はれてし まう。 海鳴り吼える斷崖の岩から岩へ歩いてゆく、 るやかに飛んでゐた鴎も見ねなくなり、 蒼穹ばかりが艶々と美しく、 重をしく、 輝やかしく頭の上に蔽ひかぶさる。 足下の巖にぶつかる大浪は 激しい水沫を顏に吹きつけ、 私は歩いてゆく、 眞つ直ぐに歩いてゆく、 沖からの暴風は眞白の浪頭に乗つて海の上を支配する。 死は海の上を驅けめぐり、 私は默々として靜澄な永遠の光を夢見てゐる、 鹽辛い死の息吹きは心の面に吹きつけるが、 澄み切つた生命の眼は無限の蒼穹を見つめてゐる。 海と地との諧調に耳をかたむけ、 生と死との歌に搖すられて、 ぱつちりと、 搖り籠の嬰兒のやうに見開く眼は、 益々深く吹き荒れる暴風と浪を眺めながら、 無限の蒼穹はその上に廣々と擴がり、 〓く、 明かに、 涯 しもない。 (一九二四年五月)

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