夜中のピストル

徳憲義

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ポンポンと ピストルが數發 つゞけさまになる 夜中の二時頃 こゝは アメリカとメキシコの國境 戰爭が始まつたか ホールドアツブか來たかと起きて見れば けいてき 警笛がボーボーと二つ長く鳴つて それから短くポツポツポツと三つ鳴つた あゝメキシカリの火事の合圖だ 窓は紅に染まつた 消防のエンヂンは けたゝましい音をたてゝ 走つて往く。 (一九二七年十一月二十八日、 カレキシコ) ◇風邪よ暫く離れてくれ 宿無しの風邪よ 君は知らぬ間に 私の體內に宿を借りた 君の突然の侵入に 私の目も鼻ものどもびつくりしてゐる 私の體は全體ほてつて來た。 我が友よ いつまでもたゞで宿を貸したいが 今はしばらく私を去つてくれ 私は天の父の御用をなす爲め このアメリカの國境までやつて來たのだ。 あまたの同胞が 愛の音信を聞かんと待つてゐる 人間唯一の福音なる 天父の救を傳へなくてはならない 賴むから暫らく私を離れてくれ。 電車のキシル音もなく 自動車の爆音も稀な のどかなる田舍町の晝 枕元で 時計ばかりがカチノ〓と 大きな音をたてゝゐる。 (一九二七年十一月二十六日)

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