大脳は厨房である
本文の表示
眼球は日光を厭ふ故に
瞼の鎧戸をひたとおろし
頭蓋の中へ引き退く。
大脳の小区画を填めるものは
困憊したさまざまの食品である。
青かびに被はれたパンの缺け、
切り口の饐えたソオセエジ……
オリーヴ油はまださらさらと透明らしいが
瓶一面の埃のために
よくは見えない。
眼球は醜い料理女である。
厨房の中はうす暗い。
彼女は床のまん中で
少しばかりの獣脂を焚く。
背の低い焔が立つて
油煙がそつと 頭蓋の天井に附く。
彼女は大脳の棚の下をそゝくさとゆきゝして
幾品かの食品をとりおろす。
さて 片隅の大鍋をとつて
もの倦げに黄いろな焔の上にかける……
彼女はこの退屈な文火の上で
誰のためにあやしげな煮込みをつくらうといふのか。
彼女は知らない。
けれども、それが彼女の退屈な
しかし唯一の仕事である。
大脳はうす暗い。
頭蓋は燻つてゐる。
彼女は――眼球は愚かなのである。
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
大脳は厨房であるの談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
大脳は厨房であるに寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。
まだ解釈・感想はありません。
ログインすると解釈・感想を書けます。