蟾蜍

上田敏

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風の無い晩に歌がきこえる…… ――月は黒ずんだ青葉の 曲折に銀を被せてる。 ……歌がきこえる、生埋になつた 木精かしら、そらあの石垣の下さ…… ――已んだ。行つて見よう、そこだ、その陰だ。 ――蟾蜍よっ。――なにも恐い事は無い。 こつちへお寄り、僕が附いてる。 よつく御覽、これは頭を圓めた、翼の無い詩人さ、 溝の中の迦陵嚬伽……あら厭だ。 ……歌つてる――おゝ厭だ。――なぜ厭なの。 そら、あの眼の光つてること…… おや冷して、石の下へ潛つてく。 さよなら――あの蟾蜍は僕だ。

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